本書、『なるほどデザイン』。 はじめて目にしたのは代官山の蔦谷書店、 デザイン関連の平積みだったかと思います。 非常に印象的な、かわいらしい表紙。 思わず手に取ってみたくなる魅力があります。 なぜデザインが気になるか 私の職業はデザイナーではありません。 しがないインフラエンジニアです。 それでもデザインが気になるのは、私が座右の本として愛読している、 ダニエル・ピンクの『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』の影響でしょう。 ダニエル・ピンクは言います。 今の仕事をこのまま続けていいか、判断する3つのチェックポイントがある。 ①他の国なら、これをもっと安くやれるだろうか ②コンピュータなら、これをもっとうまく、早くやれるだろうか ③自分が提供しているものは、この豊かな時代の中でも需要があるだろうか 技術革新や、グローバル化の進展による、 避けようのない現実がチェックポイントとして示されています。 そのような厳しい競争社会の中で生き残っていく1つのポイントとして示されているのが、 「デザインする力」なのであります。 デザインはもはやグラフィックデザイナーやWebデザイナー、服飾デザイナーや工業デザイナーだけのものでなく、 あらゆる職業に携わるビジネスパーソンに必要とされる能力になりつつあると考えています。 そして本書、『なるほどデザイン』 本書、『なるほどデザイン』は、基本的には雑誌や、フライヤー等のデザインを例にとり、 デザイナーがデザインを行う際に考えていること、そしてデザインのコツについて、 ふんだんに盛り込まれた図表とともに、とても読みやすい構成で説明してくれます。 特におすすめなのが、Chapter2の「デザイナーの7つ道具」です。 これは、雑誌の紙面やフライヤー等をデザインする際、 デザイナーが留意しているポイント、テクニックを7つにまとめてくれているのですが、 パワーポイント等の資料作成にも応用できそうなテクニックがふんだんに盛り込まれています。 むむむ・・ 道具の中の「連想力」、「翻訳機」など、実践するのはかなり訓練が必要そうですね。 でもとても勉強になります! 読み終わって 読み終わった頃、囲碁の世界トップランクのプレイヤーが、人工知能に3連敗したというニュースを目にしました。 囲碁人工知能、「深層学習」で最強棋士に3連勝 : カルチャー : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) コンピュータの進化(深化)は、止まるところを知りません。 今後、我々のルーティンワークはますますコンピュータによって奪われ、 職を失う人も多く出てくることでしょう。 しかし、「デザイン」の領域については、コンピュータによって人間が凌駕されるまでに、 まだもう少し時間が掛かるのでは、と考えています。 デザインを単なる装飾のプロセスと捉えるのではなく、現実世界の問題解決のプロセスと捉えると、 単なるパターン認識から解を抽出するだけでなく、 クライアントとコミュニケーションをとり、そしてクライアントの気持ちに「共感」し、 共に問題解決に取り組むプロセスが必要になると考えるからです。 コンピュータがそのレベルに達する(もはや、心を持つアンドロイドの実現ですね)には、 まだまだ時間がかかるでしょう。 その間、職を失わないためにも、「デザイン」や、昨今流行りの「デザイン思考」については、 コツコツ勉強を続けていきたいと思います。 21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由 posted with amazlet at 16.03.13 佐宗 邦威 クロスメディア・パブリッシング(インプレス) 売り上げランキング: 3,595 Amazon.co.jpで詳細を見る
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今、あなたは正しいことに力を注いでいますか?『エッセンシャル思考』を読み返す
先日Kindle日替わりセールで安くなっていたからか、 『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』がKindleの売れ筋ランキングの 上位に上がってきています。 エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする posted with amazlet at 16.03.07 かんき出版 (2014-12-12)売り上げランキング: 4 Amazon.co.jpで詳細を見る 昨年の今頃Kindleで読んだのですが、 よい機会なので読み返してみました。 こうやって、手元のiPhoneでKindleを起動すれば、昔読んだ本にすぐにアクセスできるところが、 電子書籍のとても素晴らしいところだと思います。 エッセンシャル思考とは 著者によれば、エッセンシャル思考の本質は、 以下の3つのポイントに集約されます。 「やらなくては」ではなく「やると決める」。 「どれも大事」ではなく「大事なものはめったにない」。 「全部できる」ではなく「何でもできるが、全部はやらない」。 本書は、自身が本当にやるべきことを見極め、そしてその実行に集中するための、 システマティックな方法論が述べられた本です。 さて、この「選択」と「集中」のエッセンス、 本書特有のものではなく、例えばドラッカーも『プロフェッショナルの条件』の中で述べていますね。 今日では、選択の自由がある。したがって、自らの属する場所がどこであるかを知るために、自らの強みを知ることが不可欠となっている。強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である。何かをすることに決めたならば、何を期待するかをただちに書きとめておく。九か月後、一年後に、その期待と実際の結果を照合する。 また、ランチェスターの法則をビジネスに応用した、 『世界一やさしいイラスト図解版! ランチェスターNo.1理論』とも、類似点があると考えます。 ランチェスターNo.1理論のポイントは、 1、差別化 2、一点集中 3、No.1(ダントツ一位) の3点に集約され、自分が一位になれそうな領域に絞り、そこでダントツ一位になることに一点集中することで、 競合との差別化を図る、という考え方です。 エッセンシャル思考の本質も、上記の類書と同様のものであると理解しました。 さて、あなたは自分の強みを言えますか? え?私?実は私も、自分の強みを日々模索しているところです。 わたしの場合、「自分がやるべきこと」と思うことを、手帳に書いて毎朝読み返すようにしています。 手帳の内容は、時々微調整されますが、基本的には毎朝手帳をチェックすることで、 自分が本当にやりたいこと、やるべきことに集中できているかをチェックしています。 それが正しいのかどうか、まだ答えは出ていませんが・・ ただし、「自分の強み」「自分が集中すべきこと」を紙に書きだしてみるというのは、 非常に学ぶところが多いです。 自分の強みがパッと頭に思い浮かばなかった方は、ぜひ一度試してみて下さい! プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編)) posted with amazlet at 16.03.07 P・F. ドラッカー ダイヤモンド社 売り上げランキング: 1,089 Amazon.co.jpで詳細を見る 世界一やさしいイラスト図解版! ランチェスターNo.1理論 posted with amazlet at 16.03.07 坂上 仁志 ダイヤモンド社 売り上げランキング: 4,754 Amazon.co.jpで詳細を見る
バカは賢くなれるのか? ― 「戦略がすべて」
帯にやられた感がある。 本書、「戦略がすべて (新潮新書)」は、 「バカは市場で勝ち残れない。」 という、私のような 「今のままで、果たして数年後、自分は市場で生き残っていけるのか」と 漠然とした不安を感じている中堅サラリーマンや、 意識の高い若手ビジネスパーソンをターゲットにした新書ですね。 概要 本書は、著者の瀧本哲史さんが日経プレミアムPLUS等の雑誌で 連載として寄稿されていたエッセイを、 「戦略」というテーマで再編集した新書です。 時事問題を瀧本さんの視点で分析した上で、 問題点(イシュー)をあぶり出し、 そして瀧本さんなりの戦略(案)を提示する、という構成になっています。 時事問題の中には、極端な言説でブログを「炎上」させてオーディエンスを集め、 言説に「ついてこれる」読者を信者的に囲ってしまい、 集金を仕組み化するネット上の炎上ビジネスに言及した章もあります。 完全に、イケダハヤト氏のことですねわかります。 戦略がすべて (新潮新書) posted with amazlet at 16.02.28 瀧本 哲史 新潮社 売り上げランキング: 84 Amazon.co.jpで詳細を見る さて、前置きが長くなりましたが、 書店で心の琴線に響いた「バカは市場で勝ち残れない」について、 読みながら「じゃあどうすればバカじゃなくなれる(賢くなれる)のか」と考えました。 本書の中では、 「バカでない」状態とは具体的にどのような状態なのか、 明確に述べられてはいません。 (当然です。バカをテーマにした本ではないからです。) 推測ですが、書名である「戦略がすべて」が表すように、 所謂「戦略思考」を駆使し、先ずはイシューを明確にし、 イシューを解決するためのステップを網羅的な観点から分析・洗い出しを行い、 そして着実に行動を起こしていける人材。 これを「バカでない」人材と仮定します。 上記のような人材になるのは、はっきりいって難しいです。 コンビニに行くと、「戦略思考」「ロジカルシンキング」といった 薄い図解本がよく売られていますが、 あんなものを読んだだけで戦略思考ができるようになるとは到底思えませんし、 一方で、分厚いビジネス書を読んだところで同じ結果に終わるでしょう。 トヨタでは、1枚の紙に、相手に伝えるべきポイントを 簡潔明瞭に纏める訓練を、日々の仕事の中で積む、という話を聞いたことがあります。 また、戦略コンサルティングファームでは、若手のアソシエイトやアナリストが 日々チャートを作成し、それを先輩社員に厳しくレビューされながら(詰められながら) 身に着けていく、と理解しています。 戦略思考のようなビジネススキルは、基本的に業務の中でそれが普通に使われている 環境に身を置かなければ、身に着かない、というのが私の持論です。 それでは、俺はいつまでもバカで生き残っていけないのか・・ 絶望的な気分に陥りますが、その解決のヒントは 「6. コンピューターにできる仕事はやめる-編集者の方程式」 にあります。 本章では、コンテンツビジネスにおけるネットメディアの台頭を例に、 今後は「コンピュータにできる仕事しかできない人間は淘汰される」と喝破します。 これは、ダニエル・ピンクが「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」で言ったことでもあります。 瀧本さんは、「コンピュータにできる仕事しかできない人間は淘汰される」と述べると共に、 これからは 「人の知恵とコンピューターの計算を融合させたハイブリッドモデルが勝利する」 と述べています。 これは、普段からIT、特にクラウド関連のビジネスに携わりながら、 私が感じていることでもあります。 「組み合わせ」が、重要なのです。 つまり、「どうすれば賢くなれるのか」という、私の問い自体が間違っていたのです。 まとめ これからの時代に生き残っていくためには、 異なるものと異なるものを組み合わせること、 例えば、 ITとリアルのモノを組み合わせること、 人と人を組み合わせること、 異なる業種と業種を組み合わせること、 等、組み合わせと工夫が重要である。 これが、本書を通じて今回学んだことです。 戦略思考のケースブックとしても活用できる本書、興味のある方はぜひお試しください。 戦略がすべて (新潮新書) posted with amazlet at 16.02.28 瀧本 哲史 新潮社 売り上げランキング: […]