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AWS Summit Tokyo 2013(Day 2)、クラウド時代のキャリア、人材育成のヒント

  AWS Summit Tokyo 2013、夕方からだったが2日目も行ってきた。 (ちなみに、会場の混雑目覚ましく改善してたよ。こういう改善のスピードが、Amazonさんの持ち味だと思うよ) 最後のパネルディスカッション「クラウドで変わるSI,ISVとエンドユーザーの関係」しか聴けなかったのだが、クラウドで変わる「SI、ISV、ユーザー企業に求められる人材像」に関する話が、特に印象に残った。 パネルディスカッション「クラウドで変わるSI,ISVとエンドユーザーの関係」 モデレータ アマゾン、片山 暁雄さん パネリスト ミサワホーム、宮本 眞一さん(エンドユーザー代表) 日立製作所、中村 輝雄さん(SIer代表) インフォテリア、平野 洋一郎さん(ISV代表)   立場の違いはあるものの、パネリストの皆さんが言われているのは、付加価値を生み出せる人材になろう、そういう人材を育てよう、ということだと思う。商売を作れるエンジニア、情シス担当者になれるか。 AWSのような仕組みが普及してしまうと、一握りの超優秀なエンジニアがいれば、システムができてしまう。多くのエンジニアは、今までと同じやり方では、仕事がなくなる。情シスも、もっと人を減らせ、となる。 ここで、よし、技術力を磨いて、自分も「一握りの超優秀なエンジニア」になろう、というアプローチは、多くのエンジニアにとって、あまり賢いとは言えないと思う。きっと、できないと思いますよ。私を含めて。 だから、「組み合わせができる人材」にならないといけない。 組み合わせは、技術だけの話ではない。問題解決やお金儲けに必要な、会社、人、技術、お金を組み合わせられる人。全部を自分(自社)でやる必要はなく、取り纏め、コーディネートができる人。個々人が、商社的な動きができる、とでも言えばいいのだろうか。 そういう人材が求められている、ということだと思います。 (技術は好きだから追いかけるのやめないよ。それだけではダメ、ということ)   以下、メモ書き。例によって、表現の違いや、抜け漏れはあるかもしれない。 SI、ISV、ユーザー企業に求められる人材像   片山さん クラウドが主流になっていく時代、各社で求められる「ほしい人材」とは。 中村さん 今一番ほしい人材は、「ブローカー」。日立は、なんでも自分で作ってしまうところがある。そういうのはやめていこうと思っている。作るのではなく、「使う」というのも難しい。AWSの使い方ひとつとってもそう。使い方や使いどころを理解するためには、物事の本質を見抜く必要がある。 日立単独で、すべてのお客さんのニーズに対応するのは難しい。だから、エコシステム。パートナーとのお付き合いが重要になる。そこで必要になるのが、ブローカーであり、「ビジネスプロデューサー」。問題解決型の人材も当然必要だが、それに加えて「価値を作れる人」がほしい。そういった人材はなかなかいない。 宮本さん システム部門についても、そういう人(ビジネスを作り出せる人)はほしいが、システム部門に来ない。そういった人材は、システム部門より、営業や経営戦略に置きたがられる。よって、多様な人材が集められるシステム部門を、今後作っていかないといけないと考えている。そのためには、システム部門の人間も、ビジネスの話ができるように変わっていかないと。インフラはAWSなどを利用し、余力を作り、ビジネスに注力する。そういった取り組みが必要。 なお、中村さんが仰った、「エコシステム」には、今後エンドユーザも入っていくようになると思う。運用や、サービス利用の方法、具体的に言うとChefの利用の仕方等は、他社も真似できる。情報を共有できれば、試行錯誤が減る。ビジネスの話に人が入っていけるし、ビジネスに注力できる。そうすることでシステム部門の評価が上がり、社内でいい人材を配置できるようになる。 平野さん ISVの立場から。大事なのは、「”紺屋の白袴”にならない」ということだと思う。クラウド化が進むと、人材リソースも最適化されるようになる。必要な人材が、必要な時に使われ、そして切られるようになる。そこで大事なのが、雇用される人ではなく、「個用される人」になることだと思う。「個用される」とは、一人一人が、「必要とされる人」になること。そうでなければ、役立つ場所を失うことになると思う。  

AWS Summit Tokyo 2013(Day 1)に参加したレポートなど

  初日、行ってきた。 セッションは、エンタープライズトラック、コンシューマートラックを中心に選択しました。 テクノロジーの内容は、普段からAWSのサポート、SAのみなさんに伺える機会があるが、他のユーザさんの生の声は、こういう機会でないとなかなか聞けないため。 参加セッションは以下の通り。 アンデルセンにおけるAWS利用事例紹介 日本経済新聞社によるAWS利用事例紹介 【実録】エンタープライズ AWS ~その時歴史は動いた~ 東急ハンズ におけるAWS利用事例紹介 事例にみる、コンシューマーサービスでのAWSクラウドの使いどころ クラウドファースト企業が実践するAWS活用の実際   AWSへの要望   セッションの中で挙がった、各社さんからの「AWSへの要望」。 これらの要望は、他のAWS利用ユーザさんも抱えられている、共通の課題を含むはずです。 SI屋として、お客さんと一緒になって考えていかないといけない。 ■アンデルセンサービス 堀尾さん メールの機能がほしい。(※おそらく、Amazon SESでは要件を満たせない、ということだと思われる) ジョブ管理、ファイル連携機能がほしい。 コントロールパネルが、エンドユーザにとって難しい。日本語化してほしい。 コントロールパネルで操作できる機能が多すぎる。基本的なサービスだけでよい。 ■日本経済新聞社 東さん ELBはだいぶハマった。ELBでは実現できない要件があった。ELBの機能とパフォーマンスを向上させてほしい。 DynamoDBのパフォーマンスを向上させてほしい。 利用料をもっと安くしてほしい。 円で支払いさせてほしい。非常に切実な要望。プロジェクト開始前にコスト試算した時は、1ドル80円。円安が進み、かなり変わった。為替リスクがある。 ■インテージ (お名前を失念) ドル高にショックを受けた。見積もりがはずれたため、為替リスクをヘッジできる仕組みがあれば。 ■東急ハンズ、ハンズラボ 長谷川さん どんどん世界展開してほしい。もっといろんなリージョンを作ってください。 EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)。いつも安くして下さい。競合よりも、圧倒的に安くしてください。他のクラウドサービスと比較検討しなくていいぐらいに。「一番安いんだから、AWSでいいじゃないか」と言えるように。 より簡単に使えるように。例えば、松竹梅の中から選択すると、冗長化や負荷分散がいい感じに設定される、的な。   クラウドファースト企業が実践するAWS活用の実際   パネルは、日経BP中田さんモデレータで、アンデルセン堀江さん、ケンコーコム新井さん、東急ハンズ長谷川さんがパネリスト。 実際にAWSを活用されているユーザさんの生の声が聞けたため、大変おもしろかったです。 (長谷川さんの漫談も・・) 以下、メモします。抜けていたり、表現が変わっていたりするかもしれませんがご容赦下さい。 AWSのよかった点、悪かった点   新井さん よかった点。PoCがめちゃめちゃ簡単。怖いので大きめのインスタンスを選択、安定稼働したら下げる。オンプレミスではできない。いらなくなっても、H/Wだと返せない。 悪かったというか、想定と違ったところ。AWSは新サービスのリリースが頻繁すぎて、社内の人材の習得が追いつかない。 長谷川さん よかった点。柔軟性。データセンタ―レベルの冗長化が簡単。データや、サーバイメージのコピーが簡単。 また、クラウドベンダーのイメージと違い、AWSはサポートが「普通に」対応してくれる。質問したらちゃんと答えが返ってくる。SAの方からも、大変積極的に情報提供してくれるところも評価できる。 悪かった点。POSシステムを導入したところ、VPC内ではマルチキャストができず、POSの時間起動ができなかった。 堀江さん よかった点。コストの桁が違う。夜のバッチ処理のタイミングのみ起動するため、利用料金を抑えることができる。EDIの仕組みをAWS上で実現した際、回線を用意する必要がなかった。EDIの監視は必須なので、サイトロック社やノーチラス・テクノロジーズ社の力を借りている。今のところ、業務が停止するような障害は起きていない。障害起きても、バッチ処理を冒頭からリランすればよい。バッチ処理時間が大幅に短縮できたため、リランしてもバッチウィンドウに収まる。   クラウドは難しい?   中田さん 国内ベンダーからこういう話を聞いた。AWSのようなセルフサービス型のサービス、ユーザは使いこなせないよ。だから、AWS、ユーザー企業が使うの難しいよ、と。 クラウドのサービスはアメリカ生まれ。アメリカは、元々ユーザ企業の中で内製が普及している。だから、セルフサービス型のサービスを使いこなす下地があった。 IPAの資料によると、日本のITエンジニアの多くはベンダーで働いており、逆にアメリカはユーザー企業で働いている。 日米で環境の差があるため、クラウドは日本に合わないということか?どう思うか? 長谷川さん そんなことはない。企業の方針次第。ハンズは、自分達でシステムを作っていく方針。ただし、自分たちだけの能力、リソースには限界があるので、プロの力を借りる。 新井さん ケンコーコムは、自前で人的リソースは抱えない方針。必要な時に、タイムシェアリングで必要なプロの力を借りる。プロにはノウハウがある。 堀尾さん 始めにVPCを導入した。これを自分達でやるのは大変。よって、先ずは専門家にベースを作ってもらう。そして、それを社内で横展開する。インフラとネットワークについては、できる限り楽をしたい。気にかけない。アプリやパフォーマンスに注力したい。よって、最初は専門家の力が必要。   情シス、ITベンダーに期待すること   堀尾さん 情シス部員について。5年後はクラウドが常識になっている。既存のホスティングのものをどうするか、今から考えておかないといけない。AWSの機能はどんどん増えていくため、自社でどう活用するか考えないといけない。 例えば、実績DBが管理会計処理も兼ねており、リソースを食いあっている。どうするか。検索だけRedShiftに移行する等、考えないといけない。AWS以外のサービスも比較して、見定める。方針を決めて、情シス部員には5年後を見据えて、準備させたい。 ITベンダーについて。ITベンダーにも得手不得手がある。システムによってはオンプレでもよい。ベンダーロックインは怖いため、OSSに寄せて、業務は担保した上で、軟着陸していきたい。SIerとどう付き合うか、商流を考える、販社として取り込む等の策を考えないといけない。 新井さん クラウド移行のスピードは、企業カルチャーの変革のスピードと一致する。カルチャーを変えないと、変革スピードは上がらない。 情シス部員について。社内に専門家を抱えることは難しい。技術が使いものになるか、社内の課題解決の手立てになるか、目利き、「匂いで探る」的な感覚を持てる人を育てたい。本を読むだけでは身につかない。クラウドは試すのが簡単なので、トライアンドエラーがやりやすい。手を動かさないと。おもしろいものが好き、あれやこれや試すのが好き。そういった素養は、技術者の本質だと思う。 長谷川さん 情シス部員について。Versatilistを目指してほしい。あれもこれもできる。自分はエンプラ系で、若い頃ホストは触れなかった。今は、簡単に試せる。ネット系の人材は、自分でビジネスを考えて、開発して、運用している。一方、エンプラの人材は保守的。そこで、部員には「できる、絶対できる!」と言い続けている。ハンズラボは、店舗にいた人間がシステムを作っている。業務がわかっている。やればできる。エンタープライス系だってできる。 ITベンダー。がんばってほしい。 中田さん 逆のことを言われているのに、共通点がある。 東急ハンズさん。店舗の経験者がアプリを開発。情シス部員25、6人の内、システムの運用は3人。残りは開発者。 アンデルセンさん。10年前は情シス部員30人、今は5人。元々いた部員は、ユーザ部門に異動。元情シス部員が、ユーザ部門でアプリ開発を主導。開発も運用も、なるべくベンダーを活用している。 逆のように見えるが、共通点は、「業務を知っている人が、アプリを作る」という点。大変おもしろい。   従量課金はうれしくない?   中田さん  ベンダーからこういう話を聞いた。予算達成できなかったら、翌年の予算を減らされる。だから、ユーザは従量課金を喜ばない。本当か? 堀江さん これは私の自論。売り上げの1%は、必要経費である。1%切ったら、システム品質は保証できない。そう社内に言い続けている。インフラ費用が下がっても、下がった分、開発に回したい。安定したシステムを提供することが重要で、従量課金とか関係ない。 長谷川さん 確かに企業に予算管理は必要。ただし、AWSの費用は、企業全体のコストの中の微々たるもの。会社全体の予算の中で、調整したい。そこが情シス部長の腕の見せ所。