Monthly Archives: May 2012

新入社員の内に読んでおきたい、ロジカルシンキングの入門書

  私が所属する会社の新入社員は、新入社員研修でロジカルシンキングの講義を受講する。 ロジカルシンキングの講義では、MECE、ロジックツリー、ピラミッドストラクチャー等の、ロジカルシンキングのベースとなるツールの利用法を学ぶのだが、これらツールは「知識」ではなく「道具」であるため、幼少時に自転車の乗り方を体で覚えるのと同じく、ふらふらしたり倒れたりしながらも、とにかく使い倒すことが上達の秘訣である。 今後、プロジェクトの現場に出て行く新入社員への研修受講後のフォローアップとして、新入社員に推薦するロジカルシンキング関連の書籍を探しており、その時に手に取った一冊が本書である。 [amazon_enhanced asin=”447800613X” /] 私の探していた本は、ピラミッドストラクチャを作成する演習が数多く掲載されており、 「メッセージは何か?(結局何が言いたいのか?)」 「そのメッセージの根拠は何か?(どういうロジックなのか?)」 を、演習を通じ、体で覚えることのできるような本である。 この基準から言うと、本書は基準を満たさない。 本書は、「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)」や「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」等のお硬い系の書籍とは異なり、ロジックツリー、ピラミッドストラクチャーといった用語そのものの説明は、必要最低限に留められている。 本書では、仮想のコミュニティ「赤国」での「ピンキー」なる魚(?)の男の子の学生生活、サッカー留学先である「緑国」での生活、そしてピンキーの住む赤国で発生した、コミュニティ全体の行方を左右する問題の解決を通じ、日々の生活において、いかにロジカルシンキングを応用し、問題解決を行うかが、物語として描かれている。本書の大部分は物語で占められており、ロジックツリーやピラミッドストラクチャの図は一部に挿絵として挿入され、説明がなされるのみである。よって、本を読み、繰り返し演習を行うタイプの本ではない。     しかし、ではこの本の価値がないかというと、全くそんなことはない。新入社員には、ぜひ本書を手にとって読んでみてほしい。 なぜ、新入社員に読んでみてほしいのか? それは、ロジカルシンキングはビジネスシーンだけでなく、日常生活においても有用な道具であることを理解してほしいからだ。 イケてないロジカルシンキングの本では、背景や理由・目的は度外視して、とにかく何かをMECEに分類することに終始していたり、ロジックツリーを作って終わり(「で?(So What?)」の視点が抜けている)ということが多い。 本書は、物語がベースになっているため、ロジックツリーやピラミッドストラクチャを具体的に「どう使うか」が理解しやすい。ロジカルシンキングのツールを、どんな場面で、どう使えばいいのか、そして、それはどんな効果があるのかがわかりやすい構成となっている。 また、物語がビジネスシーンをベースにしていない点もいい。ビジネスシーンを題材にしてしまうと、学生や新入社員にとっては具体的な利用シーンをイメージしにくいものになってしまうからだ。 そして、最もいい点は、本書の主眼が、「ロジカルに物事を考えること」だけでなく、「いかにして自分の意見を持ち、周囲の人々との対話を通じて、真の相互理解を実現するか」に置かれている点だ。 新入社員からは、「ロジックツリーやピラミッドストラクチャーって、どうすれば身につくものなんですか?」という質問を受けることがある。しかし、ロジックツリーやピラミッドストラクチャーは、あいまいさや論理的矛盾を排除し、自身の主張を整理するための道具に過ぎず、本当に大事なことは、この道具をうまく活用し、問題を解決したり、日々の生活を豊かにすることであるはずだ。各章の章末には、「海亀」なる長老による章のまとめが掲載されており、ロジカルシンキングのテクニックを超えて、特に若い世代を対象とした著者からのメッセージが込められている。     本書を読みながら、この内容であれば、工夫すれば小学生や中学生向けのロジカルシンキングの授業でも使えそうだと考えていた。ググってみると、実は著者の渡辺さんは、マッキンゼー退職後にDelta Studioなる会社を立ち上げ、子供から社会人までの幅広い年齢層を対象とした、「問題解決」の技術をレクチャーする教育事業をなさっているらしい。 インターネットの普及とGoogle等のインフラの整備(知の高速道路)により、Web上の無尽とも思える膨大な情報へのアクセスは可能となった。人間には、金持ちにも貧しい者にも、1日86400秒が平等に与えられるが、それをどう活かすかはその人次第。Web上の膨大な情報も、「1日86400秒の時間」と似ている。その膨大な情報を活かし、自らの意見を持ち、日々の生活を豊かにするための重要な習慣の1つが、ロジカルシンキングと言えるだろう。 無論、ロジカルシンキングだけで渡って行けるほど、世の中甘くないが・・・・でも、若い学生に「問題解決」の手法を教えることは、とても有益だと思います。渡辺さんの事業、がんばってください!

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夢をビジョンに、ビジョンを戦略に、戦略を戦術に、落として実践せよ

  昔、プレジデントで読んだ、伊藤忠の小林元社長の言葉。 小林社長は、次のように語る。 「いつも『夢』を持てと言っています。まず、それがなければ駄目です。しかし、次に夢を『ビジョン』に落とせ、そのビジョンを『戦略』に落とせ、戦略を『戦術』に落として実践しろと言っています」 本気のプレゼンなら、細かい質問にも明確な答えが即座に返ってくる。五分後に同じことを聞いてもブレがない。目が逃げない。つまり、単に夢を持っているだけでなく、それを実現するための具体的な戦略、戦術まで考え抜いている。内容を自分自身で完全に消化しているから、どの角度から質問されても正確に齟齬やよどみが生じない。だからこそ、プレゼンに迫力が出るのだ。   夢→ビジョン→戦略→戦術→実践というよく言われるフレームワークはすごく気に入ったのだが、個々の意味の定義は? 『夢』は、自分が本当にやりたいこと、なりたいこと。ワクワクすること。寝食忘れて打ち込める、頭おかしいんじゃないかっていうぐらい、がんばれること。 『ビジョン』は、長期的に到達したい目標地点、なりたい自分を定めること。 『戦略』は、何を持って目標が達成されるかの基準を明確にすること。目標地点に到達するための進路を明確にすること。目標地点に到達するための道程を、積み木に分解すること。 『戦術』は、日々のtodoに落とすこと。誰が、いつまでに、何をすればいいのかも明確にすること。 『実践』は、汗をかくこと。机に座って悶々とするのではなく、毎日コツコツとでも行動すること。todoが確実に消化されているか、方向性は正しいかを常にチェックすること。最後まであきらめないこと。 みたいな感じだろうか。自分の日々の行動をチェックする上で役にたつ。

ケース面接の問題

  中島聡さんのblogに「頭の柔軟体操」というカテゴリがある。 所謂、外資系戦略コンサル、投資銀行等の面接で利用される、ケース面接のたぐいである。 問題を読んでいると、電車の社内で、中吊りを眺めているだけで結構いろいろ考えられることに気づく。満員電車の中で、混雑がひどくて本すら読めないタイミングがしばしばあるが、あれは、考えようによっては、普段考えないようなことを考えるチャンスと言える。   ケース面接の問題は、以下のサイトにて、過去に実際のケース面接で使われた問題を参照することができる。 http://www.gaishi-seminar.net/book/caseStudyExample.html ボストンコンサルティンググループ 面接出題事例 「オリンピックのメダル数を上げるには?」 「日本のノーベル賞受賞者の数を上げるには?」 「スキー場の来場者を増やすには?」 「地方都市を復興させるには?」 「とある歯医者の売り上げを二倍にするには?」 「オートバイの売り上げを上げるには?」 「渋谷の町を大人の町にするには?」 「ラクロスの競技人口を二倍にするには?」 「京都の観光収入を上げるには」 「日本の子供の学力は二十年前と比べてどうなっているか」 ブーズアンドカンパニー 面接出題事例 「セイコーが時計の売り上げを伸ばすには?」 「NHK教育番組は必要かどうか?」 「あなたの成功体験を三つあげてください。それをもってあなたの自己紹介とさせていただきます」 アクセンチュア 面接出題事例 「ユニクロに勝つ戦略を考えよ」 「国内旅行者を増やすにはどうしたらよいか」 「野球の球団を黒字にするには?」 「地方の国立大学の生き残り戦略は?」 「バナナの売り上げを二倍にするには?」 マッキンゼー 面接出題事例 「ゴルフクラブの売り上げを伸ばすには?」 「日本の米をヨーロッパで売るには?」 モニターグループ 面接出題事例 「シャンプーの市場規模は?」 アーサーディーリトル 面接出題事例 「国立大学の民営化の是非」 ドリームインキュベーター 面接出題事例 「ボーダーフォンの売り上げを伸ばすにはどうしたらいいか?」 「サッカースタジアムへの入りを二倍に伸ばすにはどうしたらいいか?」 「晩婚化はいいか悪いか」 「18歳未満未成年に自動販売機でたばこを買わせないようにするには?」 「通勤ラッシュの緩和策は?」 「新幹線の中のコーヒーの売り上げは?それを二倍にするには?」 ATカーニー 面接出題事例 「日本での一年間の時計の売上は?」 「文武両道の人間を一週間以内に100名集めるには?」 「うちわの売上を伸ばすには?」 「表と裏のコイン、表と表のコインからどちらかを選んだ際に、裏が出る確率は?」 ゴールドマンサックス 面接出題事例 「日本の電柱の数は?」 「成功の定義は?」 「仕事とは何か?」 「権力を持つことの是非は?」 「CEOになるならどこの会社がいい?」 「国に投資するならどこ?」 「日本のシャンプーの売り上げを二倍に」 ドイツ証券 面接出題事例 「イラク派兵の是非は?」 「世界共通通貨は導入すべきか」 モルガンスタンレー 面接出題事例 「日本での一年間の時計の売上は?」 「キリンビールの全社戦略」 「アメフトのボールの数は?」 「都市の緑を増やすには?」 シティグループ 面接出題事例 「金融教育に100億の投資をしたい。小中高大、どう振り分ける?」 「安川電機のROIC工場は経営にどんなインパクトがあるか?」 「めがねの市場規模」 UBS 面接出題事例 「無借金経営は是か非か」 「どちらのオフィスを選ぶか(資料あり)」 バークレイズ 面接出題事例 「大学生に宿題は必要か」 野村證券 面接出題事例 「今最も熱い投資先はどこか」 「誰を総理大臣にしたら、日本の株は上がるか」   上記サイトではケース面接徹底対策の教材を15000円で売っているようで・・なかなかお高い。 ケース面接というか、所謂フェルミ推定の入門本と言えば、細谷功さんの「地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」」ははずせない。細谷さんの提唱する「地頭力」の本質である、「結論から」「全体から」「単純に」考えるコツを、実際のケース問題例を通じて学ぶことができる。 また、ケース面接の問題集ということでは、「現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート――「6パターン・5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!」もおもしろかった。パッと答えがでないような設問でも、分解して、パターンにあてはめて、「大体あってる」答えを導きだす練習に役立つ。 現実のビジネスで直面する問題は、ググっても答えがみつからないものばかり。そんな場面に遭遇した時への備えとして、思考のトレーニングはコツコツ続けたいものだ。

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